取引先を始め外部の利害関係者に対して食の安全に関する取り組みを実証するために、ISOの食品安全マネジメントシステムの導入を検討している企業の経営者、管理者の方にお話ししたいと思います。
目次
食品安全マネジメントシステムの目的
経営者は、取引先を始め外部の方々に支持される製品を作って、そして自分たちが食の安全についてしっかりと取り組んでいることを実証し、それによって、組織内外からの信用、信頼を得て事業を拡大していくことを望んでいると思います。
そのためにも、ISOやGFSIの国際標準の規格や権威のある機関の基準をもとに、規定文書を作り、体制を整え、教育を実施し、使用するインフラを管理して、運用を行うことで、食の安全に組織として取り組んでいることを第三者に実証してもらう事は必要です。
ホームページや口頭等で食の安全についてしっかりと取り組んでいると発信しても、何を根拠にしているのかと質問された場合うまく答えられないことが多いでしょう。
しかしISOの食品管理があれば「食品安全の管理に取り組んでいる」という客観的な証明をしてくれるのです。
国際標準化機構(ISO)では、ISO22000(食品安全マネジメントシステム-要求事項)を制定しています。
GFSI(グローバル・フード・セーフティ・イニシアチブ:世界中の小売業や、メーカー、フードサービス業、国際団体、行政、学術機関のほか、食品業界のサービス・プロバイダーなどが構成する団体)も、食品安全に関するガイドラインを満たした基準を制定し、複数の基準を認定して食品関係の組織、企業に取得を呼び掛けています。
食品安全マネジメントシステムの認証取得のメリット
新規の取引先を開拓する場合、いくらおいしくいい製品を作っていても、食の安全に伴う衛生管理については必ず確認します。取引したい企業から国際認証の取得が条件となる場合も出ています。コカ・コーラや西友は取引条件の一つとなっています。
むろん日本の企業では、認証を取得していなくても取引可能な場合は多々ありますが、取引先の監査を都度受けることや、様々な書類の提出等の手間は当然発生します。
ある大手メーカーや小売業者では、国際認証の取得を条件に自分達で行う監査を免除することも打ち出しているところもあります。
もう一つは、ISO22000やGFSIのベンチマークへの取り組むことによる規定文書の作成や推進体制の整備、教育訓練の実施 等の運用を行う事で、組織としての取り組みが定着し、従業員の食の安全に関する意識の向上や衛生面だけでなく品質面を含めてのレベルアップができます。
また、最低でも1年ごとに外部の審査を受けることになるので、従業員にその事を意識せざるを得ない状態が続きます。
食品安全マネジメントシステムの認証取得に必要な3つのポイント
ISO22000を前提にお伝えしたいと思います
(1) HACCP(総合衛生管理製造管理規程)の取り組み
コーデックスHACCP教育の受講、推進するための体制(これは、国際認証も同様)、ハザード分析の実施、作業手順書の整備、総括表の作成 等を通じて、運用することが求められます。
従いまして、HACCPに取り組んでいない企業・組織は、その分の時間と手間がかかります。
(2) 前提条件プログラムへの取り組み
これは、事業所内の食の安全に関するあらゆるリスクをもとに、それらに予め対策を打つよう要求されています。
施設面や機械・装置面での対応、屋外にある廃棄物処理場の管理、協力業者の管理 等、多岐にわたる取り組みが必要です。
認証に取り組む際は、文書の整備や教育の実施等のソフト面での対応に目がいきがちですが、実は設備投資、施設の改修等のインフラ面での費用がそれなりに発生します。
施設や設備の老朽化に伴うことや、外部からの侵入者に対する防御の取り組み(監視カメラ、鍵の設置 等)等、規格要求事項とのギャップを確認しながら対応を検討していくことになります。
ただ、杓子定規にこのような設備を導入しなければならないというのではなく、その事業所にあるインフラの使用状況を見ながら、ソフト面でどこまで対応できるのかは、コンサルタントに相談し、費用負担の軽減が可能なのかを確認して進めていくのがいいと思います。
(3) 運用を定着させるための継続的な教育訓練
経営者から従業員まで、食品安全マネジメントシステムに何故取り組むのかということと、業務を行う上で必要な力量が持てるようにすること、事故発生時(緊急事態)への対応 等、食品安全に対して必要な取り組みを理解し実践するための教育訓練を階層別に行う必要があります。
食品安全マネジメントシステムで注意すべきこと
そこで気を付けなければならないのは、認証を取得したから食品安全については、絶対大丈夫だというわけではありません。
特に食品を取り上げているので、事故が発生した際のインパクトは非常に大きいです。認証を取得したからといって絶対安全ですと保障するのでは無いということです。
過去、食品安全の国際認証を取得している企業の不祥事は残念ながら発生しています。人間が運用するので、法規制を始めとするルールから逸脱するリスクが発生する事を想定し、その対応を常に念頭に置く必要があります。
従って、計画に従った教育訓練の実施と各工程や段階ごとにルール通り作業をしていることを点検し、実証していくことが求められます。