認証取得に取り組む際に、まず何からやったらいいでしょうかという事を聞かれます。ある製造業の会社では、工場だけでなく営業や人事を適用範囲に組み込んでいくにあたり、いままで関わったことのない業務の中身をどう把握するのかが課題となっていました。
そこで弊社で対象となった業務の調査を通して可視化することで、その後の認証取得の取り組みをスムーズに進めたケースをお伝えします。認証取得を検討する際の適用範囲の決め方を含めて、組織の業務改善にもつながる情報を提供したいと思います。
ISO9001を適用する範囲を決める
ISO9001(品質マネジメントシステム:QMS)を適用する製品とサービスが何なのかという事を決めなければいけまぜん。
複数の製品・サービスを提供していれば、全てなのかそれとも絞って認証を取得するのかの判断となります。それに伴い、関係する部門・部署、サイトの領域が変わっていきます。
それには製品やサービスを提供する上で直接的に関連する部門(生産する部門・部署)は当然の事として、間接部門(総務、経理、情報システム 等)をどこまで適用に入れるかのを決めないといけません。間接部門を適用に入れるかどうかは、製品・サービスを提供する際の関与とどれだけの影響があるのかを考慮して決定します。
例えば、生産管理システムを情報システム部門が管理しているケースや、人事で教育訓練を管理しているケースです。規格要求事項と照らして、どれだけ影響があるのか審査会社や外部のコンサルと相談するのが間違いないと思います。
この適用範囲を適当に決めてしまうと、当初の認証取得にかかる工数が増えてしまう事や審査の際に当初の範囲外の部門にも審査の対象が拡大する等のトラブルが生じかねません。審査会社に見積を依頼する際も含めてしっかりと確認をして下さい。
組織の現状を調査する
そしてやらないといけないのが、現状の業務調査です。弊社では調査するシート(一部を次に参照)を作成して実施しています。ISO9001の規格要求事項の適合状況とのギャップを調査する事を通して、どのようにして仕事を進めているのかを確認するために行います。
前述した製造業の会社では規格要求事項をもとに各部署に何を整備するのかを指示しながら進める事は、教育の実施、作業ボリューム 等からも厳しいものがありました。
それに事務局が他部門・他部署へどのように仕事を進めているかという事を踏み込んで話しを聴く事もハードルが高かったこともあり、弊社で調査を行いました。
それぞれの業務の担当者に仕事のフローをもとに、上記のシートの各スペース(今回示しているのは一部です)を埋めていきました。スペースにある項目ごとにどれだけの文書や記録が整備されているかに焦点をあてて調査を行い、その結果それぞれの部門・部署でどのように仕事が行われているのかが可視化されました。
何が出来ていないのか、どこが脆弱なのか、そして既に十分な取り組みが出来ているところはどこなのかが一目瞭然となりました。
実は、このシートの問いの文面ですが、ISO9001の要求事項に関連して作成しています。図にすることで、クライアントに説明する際にも一目で理解していただけるように作成しました。
要求事項の項番ごとに表にまとめるよりは、それぞれの項目ごとの関連も理解できて、どのような状況なのを俯瞰することができます。
このシートをもとに話し合う材料が出来た事で、実施事項の選択、優先順位、期限、担当を決めて効率的に認証取得に向けた取り組みがスムーズに進められ、それぞれの業務の運用状況から最適な改善策を容易に実施する事が出来、喜ばれました。これは組織の規模を問わずにできる事なので、業務改善に取り組みたい組織にもお勧めです。
現状調査の2つのポイント
最後にシートの作成のポイントを2つお話しします。
1.取り上げる業務は大きく捉える。
製品・サービスをそのものを取り上げても構いません。または、製品・サービスを顧客に提供するまでのフローを「開発」「営業」「購買」「製造」等というように部門ごとではなく、業務プロセスを通して全体を確認するという視点で作ることです。
部門と部門との間でどのように引き継がれているのかという事が問題になっているケースが多いからです。それは、組織の規模にもよりますが、一つの部門で全ての業務が完結しているとは限らない事が背景にあります。(もちろんヒヤリングは部門ごとで実施していく事が殆どです)。組織の規模にもよりますが、広い視野で俯瞰できるようにやってみてください。
2.取り上げた業務の目的を文章にして確認する。
シンプルに「現時点で、業務の目的を満たすシステムの運用が出来ていますか?」という事を調査するために実施します。そのためにも一度業務の目的を文章にして確認してみると調査は進めやすくなります。
この調査は、それぞれ担当している業務が何のためにやっているのか、現存している文書や記録から本当に実現できているのかを確認する作業です。
最初は組織の仕組みの整備状態を見ていきながら、成果が得られているのかを文書や記録を通して確認できます。それらの結果を踏まえた対策も明確になります。