年上で、勤続年数が長く、周囲の人にあまりいい影響を及ぼしていない部下がいる経営者、管理職の皆さんへ、以前サービス業の会社で実施したケースをお伝えします。
技術的にはそんなにハードルは高くないですが、その人と向き合わないといけません。そういう意味では面倒なところもありますが、これができるかどうかがベテラン社員を活かすか活かせないかの分水嶺となります。是非、ご参考にして取り入れてみて下さい。もし、実践された場合は情報交換ができたらありがたいですね。
きっかけをつくる
部下に対してのアプローチは、経営者の交代、人事考課制度の導入、中期計画の開始 等の何かしら異動、新たな制度や仕組みの導入 等の変化がこれまでの接し方を変えるきっかけになります。
その企業では、長い期間勤めているものの、周囲とのコミュニケーションがままならず、仕事でも浮いてしまい、そのまま放置したような状況のベテラン社員がいます。ある事情で社長が交代し、これまでの組織の在り方や運営の方法を見直すことになりました。なぜならベテラン社員が若手社員から見ても良くない影響を与え、若手社員の定着を阻んでいる事が続いていたからです。
社長は、最初に組織を運営していくための方針を作りました。これまではトップの指示通りに動くオペレーションが定着し、ただ言われるまま仕事をするだけでした。一人一人が業務内容と自身の役割を理解しているとは言い難く、何かミスやトラブルがあっても経営側で処理してしまい、起こした事に対する自覚があるとは言えませんでした。
このままでは良くないとかねてから思っていた新社長は、社員が自分の役割の自覚と何か起こしてしまった際のインパクトを認識できるようにし、自立して仕事をしていく方向に舵をきることを決断しました。その方針をもとに全社員と1on1でのミーティングを行う事になったのです。
過去は問わない
1on1ミーティングを行う際に、どのような内容で進めるのかについて支援を行いました。様々な弊害があるといえ、長年勤務してきた方に配慮をして慎重に接していく事は当然の事です。そこで社長と合意した事は、「過去を問わない」という事でした。
この1on1ミーティングの目的は「過去」ではなく、これからの組織運営方針をもとにどんな風に働いて欲しいのかを伝える事です。過去からの働きぶりからこうして欲しいというのではなく、あくまで方針に基づき「将来」こうして欲しいと伝える事に徹するということです。
これまで、過去の働き方をとがめて変化を促しても、本人に自覚がないケースが大半で、変にこじれて、却ってひどくなってしまうケースを数多くみてきました。
過去の事を引き合いに出して説明した方が分かりやすいという意見もありましたが、事例を出すのであれば、その人のこれまでの態度や姿勢を踏まえつつ、制定した運営方針をもとに、あくまで一般的なケースを話した上でこうして欲しいと伝えていくようにしました。
相手に選択させる
最初の1on1ミーティングでは、こちらの目的や狙いを話したものの理解がなかなか進みませんでした。方針をもとにというものの相手の戸惑いや、なぜこんな事をやらないといけないのかというせめぎ合いが何回か続きましたが、それは想定の範囲内でした。
ミーティングを複数回実施し、こちらの説明と質問を受ける事を繰り返して会社の方針をもとに仕事をしてもらう事で合意できました。
ここでのポイントは、こちらの目的や意図を伝えた上で、どうするかを相手に選択してもらうようにしたことです。強制や指示ではなく選択する機会を与えて少しでも自分事にしてもらうように意識して接しました。
これは時間も手間もかかり、面倒な事です。でも、この手続きを省くと面従腹背になってしまいます。今回はベテランを辞めさせるのではありません。気持ち良く働いてもらい、貢献して欲しいからです。その事を伝え続ける姿勢が必要です。
頻度を決めてミーティングを続ける
それと、合意後に定期的に1on1ミーティングを行うようにしたことです。それにより、意識して取り組んでもらうようになりました。以前に比べると悪影響を及ぼす事は減る傾向になっています。
このような取り組みをしてすぐに劇的に変わるという事ではありません。これは時間をかけて行動変容を促していく事になります。以前に比べれば他者への声掛けや、担当外の業務の手助け 等を徐々にやるようになりました。
出来なくとも責めずにその事を受け入れた上で、今後どうしていくのかを選択させる事を粘り強く続けた事が功を奏したと分析しています。
会社の方針を拠り所に働きかける事、そしてそれを続けて相手に選択させる事、それでもうまくいかないケースは存在します。それは方針に合わない事と捉え、会社への悪影響を最低限にする対応をしていくしかありません。ただ、この人手不足の中でベテラン社員が活躍してくれるかどうかは会社の業績や成長にも影響を及ぼします。
一歩前に進んでみませんか?