社員が心身共に健康であるかのか、企業としてストレスチェックを始めとする取り組みを行い、状況を把握して、何かが発症する前に適切に対処をしていかなければいけません。我が社では考えられないと思っている経営者もいると思います。
でも、そのようなリスクに備える事で、万が一社員に何かあったとしても対応することが可能になります。会社を守るためにも私が経験した事を参考にしていただければと思います。
もし、社員と連絡が取れなくなった場合には
私は、10数年前に外資系の会社で働いていた時に、直属の上司と連絡がつかなくなり、その対応に振り回されました。
我々の業務では、オフィスへの出社はなく、自宅を基点にクライアントにお伺いしていました。上司や仲間との連絡はメールと携帯電話でとっており、一般的な組織と違う職場環境でした。
もともと、その上司は電話をかけてもあまりレスポンスがとれない傾向がありました。ある日、本社の事務担当の社員からその上司と1週間以上連絡もとれなくなっていることと、提出すべき書類が届いてなく業務に重大な支障を来たしていることを告げられました。また、当時の所属していた事業部門のトップからも対応の指示が自分にも出されました。
ただ、予定されている日程にクライアントへの訪問はしていたので、其の点についてのクレームはありません。しかしながら、社内の誰とも連絡がとれず意思疎通が出来ない事から、顧客に関わる書類の未提出が常態化してしまい社内関係者に迷惑をかけている状況が続いていました。
社内には連絡を取らずに、でも顧客には連絡をして業務を行っていることに困惑しながらも、今後のリスクも考えて、上司が担当しているクライアントについてメンバーに割り振りをしながら変更の処置をとりました。
また、私は上司と同じ市に住んでいたこともあり、自宅に何度か伺い、状況を確認を兼ねて書類の回収に行きましたが、会っていただくまで約1年かかりました。
事業部門のトップが産業医との話しから、その上司は「うつ病」である確立が高いとのことでした。うつ病に関して病気だという認識もないまま、ズルをしてさぼっているのではという先入観もあり、連絡がとれないことで、対応が後手後手にまわってしまいました。怪我や病気ではないのに連絡がとれない、出社できない、クライアントに訪問出来ない等のリスクへの対応手順が当時は何も決まっていないことも拍車をかけることになりました。
他の管理職も会いにいくことがきっかけとなり、何とか直接話しができたことで、医師の診断を受けてもらい、休職の手続きがとられました。診断を受けるまで約1年程度かかってしまい、このような事例での休職の手続きも決まっていなかったこともあり、報酬のし払いは通常通り行われていました。
テレワークの中での取り組み
社員にメンタル面での症状で業務が止まる事例は年々多くなっています。
この件で痛感したのは、ケガや身体の病気の際の手続きや対応はそれなりに整っているのに、メンタル面での対応や予防に関する事は殆ど無いに等しい事でした。
この事を放置しますと、いざ発症した際に、関わっている人たちに負荷がかかり、業務に支障をきたす事は目に見えています。
現在のコロナ禍では、このような事が起きたとして、どのように対処できるのか決まっていますか?
コロナ禍のリモートワークのリスクは、通信環境や社員とのコミュニケーション、セキュリティ 等だけでなく、社員一人ひとりの心理面でのリスクに着目し、対策を取っていく事も事業の継続に重要な取り組みの一つです。
社員に何かあった際の手順、手続きを決めて取り組む
このような事から、診断書をとって休職させることや、産業医や弁護士にも相談できる体制を整えることと、それらを踏まえて誰が何をするべきなのかを規定するべきですし、クライアントにも整備してもらっています。
次の事はこれから必要になります。
①うつ病を始めとするメンタル系の病気も労災になります。働き方改革に伴う新たな労働法が施行されました。そしてハラスメント防止法の対応は中小企業でも2022年から義務化されます。その対応も含めてメンタルに関するリスクの洗い出しとそれらのリスクの評価をして優先度の高いものから対応の手順、基準を作る
②上司と社員との1on1のミーティングを実施する。これは、15分程度の時間で頻度を多くして社員の孤立化を防ぎ、変化を察知できるようにする
③手順や基準を定めたら、定期的に周知と教育を実施し、会社としての姿勢、行動について社員の理解を得られる取り組みを続ける
④チームで、日々もしくは週末に15分程度の時間を確保し、何が出来たのかを振り返り、これから何をするのかを話し合い、情報と想いを共有する
今、御社ではこのようなケースを想定した対応手順は決まっていますか?
発症した人がいれば、しっかりと配慮をして取り組む必要があります。
本当にうつ病なのかと疑いたくなることもあるかもしれませんが、病院で診断をしてもらい、どう対処するのかを予め専門医や関係者と協議しながら規定文書を作成して下さい。
人数が少ない組織だと、トップに負担がかかり、本来業務に支障が出る事が想定されます。
起きてから右往左往するのではなく、いますぐ動いてください。