OHSAS18001からの移行を含め、ISO45001の認証取得を目指している経営者の皆さん、
今迄OHSAS18001の認証を取得したが、あまり効果が得られていないと考えている経営者の皆さん、どのようにしたら効果が上がるか考えていきましょう。
目次
労働安全衛生マネジメントシステムで何を目指しているのか明確にしていますか?
先日公開されたJISQ45001の原案(ISO45001:2018は、発効されているが、JIS化については現時点でパブリックコメントを募集中で、9月もしくは10月に規格化の予定)の0.2“労働安全衛生マネジメントシステムの狙い”ではその意図した成果として「働く人の労働に関係する負傷及び疾病を防止すること、及び安全で健康的な職場を提供すること」と、「そのために効果的な予防保護措置をとることで危険源を除去し、労働安全衛生リスクを最小化することが重要である」ことが述べられています。
これをどう紐解きますか?
単純に「労災ゼロ」を掲げて取り組めばいいということでは無いのです。
やはりリスクアセスメントがどのように運用されているかということです。
OHSAS18001でもリスクアセスメントは要求されており、何らかの基準と手順をもとに実施されていると思います。
そこで問いたい事があります。皆さんのリスクアセスメントは、「負傷及び疾病を防止すること、及び安全で健康的な職場を提供する」ことについて有効に機能していますか?
リスクアセスメントは作成するのが目的でない、リスクを先取りして、事故を防ぐことに活用できているか。
様々な企業のリスクアセスメントをみてきました。
殆どの企業は、リスクアセスメントを実施していても、結果として労災はゼロであったというところが殆どでした。
それはどのようなことかというと、そのような企業は、リスクアセスメントを一回作成して、その後レビューしても殆ど変更なしという運用でした。
そしてヒヤリハット報告も殆どありません。そのような運用では当然リスクアセスメントの内容も変わりようがありません。
このような運用を続けているのは会社の怠慢です。
ある建設業の企業では、下請けでの作業の際に、リスクアセスメントを実施したシートを作業前に元請業者に提出していました。でも提出することが目的化してしまい、その内容を作業に入る前に社内で教育することはしていませんでした。
やはりその運用の結果、ある現場で休業災害が発生してしまいました。
当然、発注者及び元請業者に損害を与えてしまい、その代償としてその後受注が決まっていた現場を失注してしまい、数億円の売上がなくなってしまったとのことでした。
本来の目的である、危険な作業や危険な取り組みを予め先取りして対応することが出来ずに、組織の危機を招いてしまいました。
皆さんの会社は次の質問にどう答えますか?
ベテランでも新人でも危険についての感度を上げていけるよう常に指導、支援をしていますか?
そして、作業する頻度が低いが定期的に実施する作業(メンテナンス作業、年に1回程度の作業 等)や急に実施せざるを得なくなった作業について、しっかりと洗い出してリスクアセスメントをしていますか?
例えば、リスク対応策して作成した「手順書類」は、更に安全な作業ができるように、見直してブラッシュアップしていますか?
上記の問いかけはほんの一例です。もし一つでも当てはまるのであれば早急な対処が必要です。
疾病やメンタルに関するリスクアセスメントは行っていますか?
先日、ある建設業の企業では、現場代理人が複数月に渡って200時間弱の残業をしてしまい、現場で倒れてしまいました。処置が遅ければ死亡に至ったかもしれない重大な労働災害を起こした事例を確認しました。
皆さんもご存じの通り、長時間の残業は、あらゆる病気の発症につながり、その状態を放置することは、その社員の健康を害してしまい、組織にとっても事業が継続できないことにつながります。
また、質問です。
リスクアセスメントでは、このような長時間労働に関するリスクを特定して取り組んでいますか?
また、社内での人間関係や様々なハラスメントにより社員の精神状態に著しく悪影響をあたえてしまうことをリスクアセスメントで特定して対策をとっていますか?
社内での非効率的な作業により社員に負荷をかけてしまうリスクはどうですか?
ケガだけでなく、心や身体のリスクについてどれだけ特定していますか?
法規制をしっかりと理解していないことで発生してしまうリスクの対応はいかがですか?
リスクアセスメントの事が殆どとなってしまいましたが、労働安全衛生マネジメントシステムでは、リスクアセスメントから、対応策の実施と検証、改善というサイクルを回すことが求められています。
リスクアセスメントの目的はリスクを先取りしてケガや疾病を防ぎ、働きやすく、安全、安心な職場環境を創ることです。
まずは、現状のリスクアセスメントの運用を検証して下さい。