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ISO 42001(AIMS)が必要とされる本当の理由
先日、あるお客様にAIマネジメントシステム(ISO 42001)の説明をさせていただいた際、一通の規定文書を見せていただきました。 「とりあえず社内のAI利用ルールは作った。でも、果たしてこれで本当に会社を守れるのか不安なんです」という切実な悩みと共にです 。
この悩みは、決してこのお客様だけのものではありません。生成AIの爆発的な普及により、現場での利用はなし崩し的に増えています 。情シス担当者のもとには、日々「このAIツールを使いたい」という問い合わせが寄せられていることでしょう 。
しかし、他社の事例を真似たり、ガイドラインから抜き出したりして「取り急ぎ作った文書」に、果たしてどれほどの実効性があるのでしょうか 。
「点」のルールから「線」の仕組み、そして「面の運用」へ
多くの組織で見受けられるAI規定は、「何をしてよいか、何をしてはいけないか」を並べただけの、いわば「点」のルールです 。しかし、これだけでは実際にルール外で使われることに歯止めがかからない状況に陥ります 。
AIには特有のリスクが潜んでいます。それを認識させ、社員のリテラシーを向上させ、ルールを遵守させる活動を定着させるには、PDCAを回して運用を改善し続ける「マネジメントシステム(AIMS)」という「線」の仕組みが必要です 。
しかし、システムを作るだけではまだ不十分です。私たちはその「線の仕組み」を、組織全体で機能させる「面の運用」へと昇華させていかなければなりません。単に手順があるだけでなく、現場の隅々まで意識が浸透し、どこで何が起きても適切に対応できる「面」としての強さがあって初めて、AIという不確実な道具を、組織の確かな武器として扱いこなすことが可能になります。
なぜ、今当社が「ISO 42001」に向き合うのか
弊社はこれまでISO 27001(ISMS)を中心に支援してまいりましたが、新たにISO 42001のコンサルティングを開始しました 。
「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」というそれぞれの立場でリスクを精査すると、このシステムのライフサイクルには、企業の存続を脅かすリスクと同時に、計り知れない「便益」が表裏一体で存在していることが分かります 。
この多角的なリスクと便益を正しく理解した上で、実効性を持った仕組みを整備し、運用していく必要性を私は痛感しました 。だからこそ、単なる書類作りではない、組織の価値を真に引き上げるための実効性のある運用をお手伝いしたいと考えています 。
最後に:悩まれている皆様へ
AIの利活用はもはや必須です 。しかし、適切な管理がないままに使用し続けることは、組織にとって「自社のガバナンスが及ばない領域」を放置し続けることに他なりません。
AIに関連するリスクを知り、適切に取り組むことは、組織に多大な利益をもたらします 。それらを知らずにいるのは、経営の可能性を捨てているのと同じでもったいないことです 。
「とりあえずのルール」で不安を抱え続けるのではなく、経営に不可欠な「有益な活用」を目指し、企業価値を上げるための「生きた仕組み」を一緒に作っていきましょう 。
次回予告
第2回からは、いよいよISO 42001の規格に入っていきます。
まずは「規格の序文」に焦点を当てます。なぜ国際規格は、これほどまでに組織の「意図」や「目的」を問い直すのか。単なる条文の解説ではなく、実務者が「ここだけは押さえておくべき」という急所を、私の視点で整理してお伝えします。