先日、国際原子力機関(IAEA)が、東京電力福島第一原子力発電所の事故の最終報告書を発表しました。その内容は、東電のみならず政府を含めた規制当局の認識の甘さを痛烈に批判しています。事故発生時に「想定外」であるということをさかんに東電や政府は弁明していたことは記憶に新しいと思います。
私は、そのようなことを平気で発言する無責任さに憤りを感じました。事故のリスクに目をつぶり発生の確立が低い重大な災害に殆ど備えてこなかったことが今回の取り返しのつかえない惨事を招きました。「想定外」と言っていることが既に責任逃れであり、国際標準の中で通用しないことを認識しているのでしょうか?
IAEAは、事故発生前から加盟国の原発の安全性の評価の際に、PSAという国際社会で認められている基準を用いて実施するよう勧告を行ってきたといいます。この評価基準は、大事故につながる全ての可能性を把握することを求めています。
このPSAの基準で非常用ディーゼル電源の浸水対策の不足や、10年ごとの定期安全レビューでの地震・津波対策の再評価が義務付けられていたそうですが、第一原発について日本側はこの国際基準に十分に従っていなかったことが、河北新報の朝刊に示されていました。
このことは労災リスクでも同じことが言えます。作業頻度が低い「非定常時の作業」の際に、重大災害が発生する確率がグッと高くなる傾向が過去の統計から明らかになっています。当然、作業頻度が低いということは発生確率は低いことになります。
現場では、その認識があっても、経営側で費用対効果の名目やコスト削減のなかで、なかなか取り組みが進んでいないことが多いようです。起こしてからの刑事罰や多額の損害賠償リスクからも対策を打つ方が合理的であることは理解しても目先の業績も大事であるということなのでしょうか。
前回でも話しましたが、そんなリスク回避の観点から外部の基準、見方を取り入れ、自社の制度、仕組みを見るべきです。今回の原発事故や様々な労災事故も結局は組織内でしか通用しない基準、慣習で取り組んだ結果、何が安全なのかが麻痺したことからも起こっています。
経営者サイドとすれば、外部の目を取り入れることは勇気のいることかと思います。ただ、今後の組織を継続させ、成長させるためにはこのような取り組みは必要不可欠です。是非、ご英断を!! 国際標準の基準をもとにしっかりとお手伝いします。