クレームがなかなか減らない、不良品の発生が年々多くなってきている 等、良くない状況が続いていいる中小企業の経営者の皆さんと考えていきます。
原因の特定はどこまでやっていますか?
以前このような会社がありました。製造業の会社で、不良品を前年度から2割削減の目標を毎年掲げているにも関わらず数年間は、前年度の実績から1割~2割程度増加している、という一体どうなっているのかというケースでした。
不良品に関する書類やヒヤリングから次の事がわかってきました。
① 社内で発生した不良品及び社外で発生したクレームについては、発生した工程の担当者が報告書を作成して提出されており、台帳で進捗管理ができるようになっていた。
② 原因の特定及び是正処置は、発生した工程と品管のセクションが関わりながら進めていた。
③ その結果は、毎週の会議で経営層に報告されていた。
上記の取り組みは、いたって当たり前のことであり、仕組み上からみて問題が無いように見えます。でも、これらの不良品の報告書の原因の欄には同じことが何枚も書かれていました。
そこで、現場の作業者にどんな状況の時にミスが起きやすいのかを中心に確認したところ、図面の寸法の数値がつぶれてしまい見づらくなっている時や、加工範囲がわかりにくいときに、上司や関係者に確認をしないまま加工してしまうことで不良品が発生してしまうことがわかってきました。
これを読まれている皆さんは、なんで確認しないのかと思うはずです。自分もそうでした。
納期が押し迫ってしまい焦りが出た時や、何とかなるだろうとそのまま作業を進めていること等も確認されました。このことが大きな原因なのかと驚いたと同時によくありがちな話でもあると感じました。非常に矛盾していますが。
報告書にある発生原因の内容も、「図面の確認不足」や「上司への確認をしなかったこと」等が書かれていました。
その会社では、上司を含めてそれ以上何が原因なのかについて話し合わず、報告書を書くのが当たり前になっていました。再発防止より報告書を作成するのが目的化していました。
それにしても原因の追究が浅すぎて、とても真の原因にたどり着ける状態ではありませんでした 。
このような事は、この会社だけではないんです。例え、不良品が発生してもその出来事を書いて会議で報告したが、その内容について何も意見が出てこない。
そんな事がまかり通る風潮について内部では当然だれも気付かない。でも、そんな会社がいかに多いことか!
原因の調査と再発防止策
はたからみると、複数の部門の担当者で検討し、対策についての進捗を管理するための台帳を整備し、会議体で1件ごとに検討や確認も行われ、発生原因の特定の仕組み、体制も、整っているように見えます。 それでも、再発しているのは次のことが考えられます。
① 作業者が 手順通りに対応したことで、無意識に満足した状態になってしまっていること
② 担当者が、原因の調査の方法がわからずに、そのまま起きたことを報告書に書いて、それを認めてしまっていること(担当者に丸投げの状態)
③ 現場に作業者と品管部門が慣れ合いの状況下にあり、目の前に起きた事以外の事を追求できなくなっていること。:あきらめの状態に陥っている(担当者に自覚はない)
④ 原因の特定より、責任だけ追及されてしまい、罰則の適用で一件落着になってしまうこと
⑤ そして、経営層の関与が薄い会社です。会議体では、コメントは確認できるものの、それ以外の関わりが確認できないことです
根本原因を明確にするために、効果的な9つのこと
「なぜ起きたの?」「どのようにして発生したの?」
これらのことが一番知りたいと思います。ただ、上記のように単刀直入に聞いても、聞かれたほうは答えられない方が多いと思います。
原因の調査について次の事を行っていきます。
① どこで:どの工程で、どの作業場所で 起きているのか
② どのような時に起きるのか:例 納期に迫られて、新規の製品に取り掛かってしまった、図面の寸法が見にくく、そのまま作業を続けたため
③ 誰がよく起こしているのか:経験の浅い社員か、スキルが低い社員か、傾向をみる
④ どのような作業をしている場合に起きているのか
⑤ マニュアルや手順書はあるのか、その内容は最新の手順が網羅されているか
⑥ 関連する作業について、どのような教育訓練は実施され、担当者が理解されているのを確認できているのか
⑦ 作業方法、材料、作業者、設備・機械、製品 等について変更点はなかったか
⑧ 不良品が発生した際のデータを活用しているか
⑨ 発生した作業に関わっている(直接、間接 問わず)全ての人たちによって調査が行われているのか
どうか、これらのことを踏まえて、相手に答えやすい質問をして、具体的な回答を引き出すことをやって下さい。
発生させた担当者を責めたり、注意をしただけで再発を防ぐのはさすがに難しいです。担当者が責任を追及されるだけでは、自分に不都合なことを話さず、正確な情報も提供されません。
この事は、担当者を責めるのではなく、組織として再発を防ぐためにどのように取り組まなければいけないのかをはっきりさせることが目的であること。そして一緒に協力して原因を究明し、よりよい作業環境を作っていくという事を担当者にしっかり説明して下さい。
担当者に心理的な安全・安心の場を作っていくことが原因の究明に最も必要です 。どのようにしたらそのような場が出来るか次の機会にお話しをします。