ISO9001の認証取得もしくは、認証を維持している組織で、設計・開発のプロセスがわかにくい、どのようにシステムを構築していいか苦慮している中小企業の管理者や経営者の皆さんと考えてみます。
ISO9001でいう設計・開発とは何なのか
8.3「製品及びサービスの設計・開発」は、8.2.2の「製品及びサービスに関する要求事項の明確化」の要求事項を押さえていく必要があります。
8.2.2の a) では、「1)適用される規制要求事項」と 「 2) 組織が必要とみなすもの」 の2つについて製品及びサービスの要求事項が定められていることが要求されています。これは、顧客の要求が何かについて応えるための請負型の製品及びサービスとなり、代表的な例とすれば戸建ての建築の設計がイメージできると思います。
それに対して b)は「組織が提供する製品及びサービスに関して主張していることを満たすことをできる」と規定され、これはメーカーが自社で開発した製品及びサービス市場に提供する市場型の要求となります。
そこで、まずは自社の製品及びサービスがどちらのタイプなのかを踏まえたうえで進めていきます。
そうなると既に顧客から設計書や仕様書が提供され、それに従って製品の製造及びサービスを提供している組織はこの設計・開発について適用除外となるのかという問いが出てきます。
この8.3の「設計・開発」は、工程の設計も含まれます。例えば、公共の建設業では設計図書が発注者から示され、それに基づき施工計画書を作成しますが、この施工計画書の作成のプロセスが設計・開発に該当します。
設計・開発に関しては、安易に適用除外はできません。審査を受ける前に、審査機関に確認しながら進めてください。認定機関の日本適合性認定協会(JAB)では、上記のような工程設計を8.3に適用させることを求めています。
実際に設計・開発をどのような手順で行っているか話し合ってみる
ISO9001の8.3 設計・開発では、「設計・開発の計画→インプット→管理→アウトプット→変更」の流れで要求事項が示されています。
認証している多くの中小企業では、この流れで自社の設計・開発における手順を作っている傾向があります。
ただでさえ、わかりづらい規格要求事項の文章です。この規格の流れで手順書を作っても現場の人たちや、新たに従事する人に理解させることは実際にできているのでしょうか?
そのために始めにやるのは、実際に行っている手順をフローにアウトプットすることです。
そして、一つ一つの段階で、誰が実施して、次の作業に進むのかを承認しているのか、その際のアウトプットされている書類や他の媒体のものが何なのかを明確にして下さい。
上記で明確になった手順を、5W1Hで文章として作成するか、そのままフローに肉付けしていくかは、それぞれの組織で最適なものを選択すればいいと思います。
設計・開発のスタートの段階(これは組織にとって様々なケースがある)から設計・開発の最終的なアウトプットが設計図面/仕様書もしくは試作品をつくるまでに様々な事を行っていることを文書化してください。
品質マニュアルにおいて、ISO9001の8.3の設計・開発の規格要求事項の文面をただなぞったような内容では、設計・開発のプロセスを確立しているとは言えません。自分達が実施していることを手順書として作成し、その後規格要求事項と照合しながら進めていくのが良いと思います。(品質マニュアルの中で文書化することでも問題ありません)
規格要求事項にしばられず、自分達のやっていることを明確にする
それでは、設計・開発のプロセスの具体的な進め方を示してみます。ISO9001の8.3.4では、設計・開発のプロセスで何を管理するのかa)~f)にそれぞれ示されています。
a) 達成すべき結果
b) 要求されている事を満たしているのかレビューすること
c) 検証を行う事
d) 妥当性確認を行うこと
e) レビュー、検証、妥当性確認の際に問題になったことについて必要な処置をとる
f) 上記の事を記録すること
シンプルに言うと、設計・開発のスタートの段階から設計・開発の最終的なアウトプットが設計図面/仕様書もしくは試作品をつくるまでの手順を文書化していけば、上記の要求事項を全てとはいいませんが、既にある程度満たして実施しているのではないでしょうか?
更に、組織によっては、設計図面/仕様書や試作品の作成以降の取り組みも書いた手順書を作ることもあると思います。
規格は設計・開発の段階では、このような要求をしていますが、顧客からの要求をどのように確認し、その設計や開発について、購買、製造して顧客に提供するまでの全体の流れを一つの文書にして、俯瞰して確認できるようにすることをお勧めしています。
どうか、自分達の仕事に進め方を一番において組織の仕組み/システムを作って下さい。
規格要求にしばられ、肝心の事がどこに書いているのか、又は何も決まっていないことになっていませんか?