責任者(管理職)が交代してから、どうも業績が伸びない、じり貧である、活気が依然よりなくなった、報告が遅い、やるべきことをやっていないと感じている、中小企業の経営者の皆さん、一緒に考えてみたいと思います。
目次
トップの引き継ぎがスムーズにできるか
皆さんは、今回のタイトルについて多少違和感を持っている方も多いのではないでしょうか?
作業現場、事務所での作業等の通常業務について、マニュアルや制度を作って仕事を進めているのはよくあることです。
じゃあ、今回はなぜこのようなテーマでお話しをしたいと思ったのには訳があります。
私は、経営者が変わった際に、先代との違いをムリに出そうとして組織がガタガタになったり、代わった当初社員からの支持が得られなく苦労された経営者を何人か見てきました。
経営者の使命の一つは、引継ぎをする際に、組織も業績も好調に維持しながらスムーズにバトンタッチをすることです。
「無印良品」は、15期以上増収増益ですが、その間に経営者は複数交代しています。これはスゴイことです。
「無印良品は仕組みが9割」という書籍では、MUJIGRAMと業務基準書を都度見直しをしながら、徹底した標準化をして業績を向上させていることが書かれています。
ここでは、作業方法だけでなく、店舗運営に関しても手順が決まっており、誰が店長をやっても運営できる仕組みを作っています。
当然経営に関しても、経営者として必要な力量を身につけるための様々な事に取り組みがあり、経営者になるたの仕組みが整っており、極端な表現ですが適格な人が経営者に選ばれるようになっているのではと推測します。
目標達成のための計画を作っても、社員の成長の機会となっているのか
いままで様々な会社での支援や審査において、方針や目標を設定して、達成計画を作ってPDCAサイクルを回しながら目標の達成への取り組みを確認してきました。
でもほとんどが、売上や利益の金額を指標として、その達成のための実施事項が「○○を受注する」、「△△に訪問する」等の内容となっており、数値の提示だけで具体的に「いつ」、「誰が」、「何を」、「どのようにして」等の内容になっていないことが殆どでした。
売上や利益の指標が達成しても、なぜそうなったのか要領の得ない文章や回答が殆どで、また逆の達成していないケースでも同じことが起きていました。
これには、いろいろと要因があるのですが、作成した達成計画を作っても活用されていない、実際は、計画があってもなくても目標達成に支障がなく事業が継続できたのだと思います。
要するに結果オーライです。
其の行き着く先は、経営者(営業責任者)の営業次第で業績が左右されていることが多く、社員一人一人の業績への貢献が測りずらいことが多いと感じています。実際に計画がどうのうこうのではなく、結果でしか評価していない事も大きいと思っています。
計画したことに責任を持ち、やるべき事を明確にして実行する取り組みにシフトしていないと達成計画が形骸化していきます。このように重要な事項をいつまでも特定の人に依存する事はあまりにリスクが大きいと思いまし、そのトップの方の力量以上に伸びていく事は難しいのも実態です。
目標を設定し、達成計画を作り、社員にも責任を持たせて達成に向けた取り組みを実践させていく事は、成長の機会となり、組織化していく上で欠かせない事です。担当者と経営者との役割分担をしながら、任せていく領域を少しずつ広げていく事で一担当者から管理職へとステップを上げていく事を継続できるかどうかが、個人商店か組織となるのかの分かれ目になるのではないでしょうか。
人を育成するという視点だけだと大変かなと思いますが、本来の目的は将来の組織を創るという事です。今いる人達に能力を発揮してもらい、前に進めていくには直接指導も必要ですし、知識や技能を学ぶ機会をどれだけ作り、意識して行動していくのかだと思います。
マネジメントは他者を通じて物事を成し遂げる事、一貫したマネジメントの姿勢は言語化し、社員に示すこと
「他者を通して物事をなし遂げる。」マネジメントの定義ですが、これは経営者として自分自身が先頭に立ち取り組むことと、他の人の能力を発揮させ組織に貢献してもらう事でもあり、経営の目標の達成には、様々なアプローチがあります。
いままで振り返ってみて、自分が動いたほうが結果は早いし、任せるといつ結果が出るかわからない、どうしても自分でやってしまう、という事はありませんか。目先の事だけ考えるとこうなってしまうという事ですが、時間軸を長く観て考えると、自分自身の首を絞めている事に気づくと思います。いつまでも同じ事を繰り返してしまい、本来なら次のステップに移行して高い次元の仕事を行うことで自身の成長及び組織の進化につながっていきます。
中小企業の場合は、大手と違い人的リソースも限られ、業務の遂行する能力も劣っている事が多いと思います。これまで、様々な中小企業の人達をみて感じたのは、トップが未来に向けたお話しをしても自分事として捉える事が出来ない現実でした。その実現性にも疑問があったり、何より今目の前にある仕事に向き合う事で精一杯だという意見でした。
前の項では、目標に関する事を話しました。そうした仕組みを作る事はそれほど難しい事ではありません。その作った仕組みを持続していく事が難しいと思います。それは、何のためにこのような事を行うのかという目的、意図、ゴールを伝えていないからです。まず始めに行うのは、目標の設定をする際に、自分は何のために仕事をしているのか、将来どうなりたいかを問いかけて、考えさせ、その人の価値観や意見を話してもらい、その人の大切にしている事を知る事が必要だと思います。
目の前にいる人が何を考え、どうしたいのかを知る事で、意思相通や情報の共有は進んでいくはずです。最初から、何の指導もせずに結果を出す人は稀です。面倒な事ではありますが、トップからの発信だけでなく、相手の意見や考えを受けとめてください。
とはいえ、まずは会社/組織としての考えを、そして経営者の想いを何らかの形で言語化する必要があります。次の取り組みを示します。
①まず、経営理念の策定と理念を実現するための5年後もしくは10年後の組織の目指す姿(ビジョン)を作ること
②その際には、現状の実績に関するデータを基に様々な角度で分析をして、最低でも5年先の経営計画書(売上、利益、社員数 等)を作ること
③理念や経営計画書を実現するための人物像を明確にし、人材の育成方針も決めてください。
上記の事をなぜ文書化するのか、その事を社員に目と耳で伝える事で自分の将来とどのように関わるのかを考えてもらうきっかけにして欲しいからです。ここまで作れば、社員のキャリアアップのシステムも作りやすくなり、社員も自分のキャリアアップに実感が持てるようになります。
④そして、それらを作成する際に、時期や成長の段階を踏まえて、幹部や管理職、可能であれば社員を巻き込んで一緒に作成できれば更にいいと思います。
⑤作成したビジョンと経営計画書は、社員に配り、理解してもらうまで周知を続けること。
今まで会社を経営してきた経験もアウトプットすることです。特に失敗した事例は次の世代に伝えるために必要なことです。
確かにマネジメントは簡単なことではなく、個性が出て当然です。ただ、一貫した社員に対する考え方、成長への取り組みが継承される事は社員の安心感と意欲の向上につながっていきます。
その時々の組織を取り巻く状況で、都度様々な判断をし、今までの取り組みを転換することもあります。ただ、そこに至るリスク管理や意思決定に至るマネジメントの手法は次世代に継承できるように言語化して精度や仕組みを残し、改善を重ねていく事をお勧めします。