組織を、目的を共有し、目標達成に向けて同じ方向に一体となって取り組めるようにしたいが、なかなか進まずにお悩みの中小企業の経営者の皆さんにと考えていきます。 人材の育成だけでなく、組織開発の観点からの取り組みが必要であり、その事を踏まえて お話しをします。
なぜ、面談やアンケートを行うのか
殆どの中小企業では、経営者が戦略を決めて、それに沿って業務や現場に従事することで今まで事業が継続してきました。ただ、このコロナ禍になる前から、業績がいい企業では、社員の能力を発揮させ、経営者にない発想や考えを取り入れ、当事者として失敗しても何度もチャレンジをさせ続けた事が結果として業績の向上につながる事がわかってきました。このような幸福感や組織への満足度が高い社員は、生産性が1.3倍、創造性が3倍、売上も1.4倍となったことがアメリカの南カリフォルニア大学を始めとする機関の調査からわかってきました。
以前から社員の望む事や考えを知るための取組みとして、アンケートや面談を実施することがよくありました。なぜ、このような事をやろうとするのでしょうか?まず、経営者(経営層)が社員と向き合わないと何も変わっていかないからです。まず手始めにアンケートや面談は、情報を得る手段としては実施することが可能であるからです。ただ、組織においては実施しても一過性な取り組みとなってしまい、その中身についてどのように活かされたのかうやむやにになっているケースが多くなっています。
面談やアンケートの実施のきっかけは、このままではいけない、更に発展するためにはどうしたらいいのか等の何かしらの問題認識を持って実施していると思います。その問題認識にそって、これからの組織(企業)をどうしていきたいのか、組織内でその原因を話し合い、ホンネで話し合える場が必要となります。
ただ単に話す場を設けて、コミュニケーション不足について話しましょうとお題を決めても参加者は構えて警戒してしまい、ホンネの話しなど到底できません。
皆が自分事して取り組みには、指示や命令だけでは動きません。段階を踏みながら話し合いの場をつくり進めていきましょう。
面談は、話し合う前に目的をしっかりと伝えよう
まず今回は、上位の方が部下や後輩と面談する事を前提にお話しをします。面談の最大の目的は、信頼関係を創ることです。もっと端的に言うと言いたい事を話し合える関係です。当然、面談者と対象者との関係もどうなっているのかが最も重要です。当事者同士の関係が良くないのであれば効果的な面談は多分望めないと思います。面談する方に対象者への理解を深めたい、その成長に関与しなければ(関与したい)という気持ちがないと意味がありません。忌憚のない意見を出してくれと面談の冒頭に話したとしても、打ち解けることができず、意見があまり出ないためこちらから一方的に話しをしてしまったとしたなら対象者にとって、何のためにやっているのだろうと不快感や不信感をもってしまうでしょう。
始めに面談は何のためにやるのか目的を伝えることが必須です。その面談の中で対象者と何を話し合いたいのか、そしてどんなことを話してほしいのか、目的に関連した「問い」を用意して、意見を聴くという姿勢で臨んで下さい。面談は、一過性でやるのではなく、継続的に実施することが有効です。初めからいろんな意見や考えを引き出そうとは考えないでください。
グラウンドルールを示し、自分を伝える
対象者との最初の面談では前段でお伝えした目的を伝えた後は、この場のグランドルールを話して、相手の心理的なハードルを下げていく事は有効です。たとえば、「いったん受け止めた上で、相手の意見を否定しない」、「相手の話しを途中でさえぎらない」、「事実を確認していく」 等、いきなり聞きたい事を問うのではなく、この話し合いの場のルールを伝えて、相手に合意をしてもらうようにしましょう(もちろん無理やりではいけませんが)。面談中、話しがなかなか深まらない場合は、このルールを再度伝えていきましょう。
それとともに、必要なのは、今回の目的に沿った内容で自分の想いや経験を話し、自分の事を開示していく姿勢です。自慢話は厳禁ですが、自分の今の想いや相手への期待を伝えることなどで距離を縮める工夫をして欲しいと思います。まずは、自分の想いを話してください。相手が話しやすい場創りを心がけてください。管理職の指示や命令で意見や考えを出せと言ったところで、必要最低限の事しか伝えるだけとなってしまい、到底お互いを知る事、理解する事は出来ず、表面的な関係に留まってしまいます。
相手の事を知る取り組みは必要
このような取り組みをしても、最初から意見や考えを出してくれといってもなかなか出てこない事もあると思います。そのような時は、今までで印象に残っている事、嬉しかったこと、そして話しがはずんでいけば、現在困っていることや興味があること 等、上位者がいきなり目的に沿って聞きたい事を聞くのではなく、段階を踏んでみて下さい。そのような事を繰り返していく事で、相手が「こんな事を考えているんだ」、「こんな事が得意なんだ」等 思わぬ発見をして、距離感を縮め、少しずつ理解を深めていくことができます。
仕事以外の事を話してもらうのがポイントです。対象者自身が話したい事を聞きながら進めていくのもいいと思います。対象者について他者からの話しだけ判断するのは変なフィルターがかかってしまい危険です。実際に話しをすることでポジティブな面もあれば、ネガティブなところも含めて、様々な発見をしてください。
実は私も、支援先に行って支援を始める前にこのようなステップを踏んで参加メンバーと話し合いを行っています。メンバーに話しをしてもらい、「こんな事を考えているんだ」、「こんな事が好きなんだ」等 思わぬ発見をして、話し合う事で距離感を縮め、少しずつ理解を深めながら、支援を進めています。
参加者の多くは、自分の事を話していく中での自身の気付きや変化、また他の参加者からの意見や態度から、自分の事を少しでも知ってもらうことで、関係が徐々に良くなっていくことを実感したと話していました。あるIT関連の企業では、社員が入社時に自分のことを話してもらい、既存のメンバーに聴いてもらう場を作る事で関係性を深める場を作っています。この取り組みは長年続けており、組織にとって生産性を高めるために有用であるとのことでした。
ホンネで話し合える事は、組織を成長させる上で欠かせない事です。自分の事を相手に伝え、相手の話しに関心を持って聞いていくことを通して、双方向でのやり取りから心理的な壁を取り払い、円滑な関係を築く場を継続して作っていく事が必要です。
非常に地道な取り組みですが、継続することで、幸福感が高く、満足度も高い社員を増やしていくことで組織の土台を強くします。組織開発は、それを促進させ、持続可能な組織を創っていきます。