同業他社に対し、どのようにして差別化し、市場の優位性を高めいたいと考えている中小企業の経営者の皆さんと考えていきます。
組織の差別化は組織の存在意義(パーパス)を定義し、共有することから始まる
差別化とは、他社より優れている若しくは他にない自社の製品やサービスを提供し、顧客から支持されることですが、ただ実現している企業はどれだけあるでしょうか。簡単に出来るのであればそれに越した事はないのですが、でもその企業ならでは差別化の取り組みを続けていくのが事業を継続するには必要不可欠です。
ここでは、製品・サービスの差別化の前に、まず組織開発(結果を出すため、当事者の思考や行動を変えていくこと)を通して組織の文化(組織の価値観(物の見方/考え方)、行動様式)を変えていく事です。それには、自社が社会において何のために存在をしているかを明確にしていくことです。
①事業の再定義をし、自社の存在意義(パーパス)をはっきりさせること
HILLTOPの山本昌作副社長は著書の「遊ぶ鉄工所」で自社の事業について製造業ではなく「製造サービス業」と定義をし直して、職場環境や仕事の進め方、教育の方法等、様々な事に取り組みながら改革を進めた事を書いていました。“ものづくり”だけでなく、それに伴うあらゆる取り組みを顧客目線で考え、マーケットインの発想で顧客が求めている事は何かを考え抜いて定義し直したことで、今まで付き合いのなかった有名な企業からの取り引きを増やし、それに伴い業績も向上し、コロナ禍前までには、年間2000人以上の見学者が訪れて、その取り組みを学んでいるとのことです。
②自社では当たり前で大した事がないと思っている製品・サービスや活動を洗い出し、強みを導き出すことで、組織の存在意義(パーパス)を見出していく
自分達の仕事の中で、無意識にプラスアルファでやっていることがそれなりにあると思いますし、受注頻度が少ない製品・サービス、従業員の力量、インフラ、顧客の要望、外部の協力業者 等、多様な観点から自社の強みや市場が求めているのがどこにあるのか全社で話し合ってください。自分たちが今まで気づかなかった事が何かあると思います。
ただ、強みがなかなか出てこなかったとしても、少なくとも組織のこれからの方向性、目的について、合意が得られるまで根気強く続けて下さい。これは①にある「組織の存在意義(パーパス)」にもつながっていきます。このパーパスは、トップが決めて示すという事ではなく社員も含めて考え、話し合い「そうだよね」という納得感、腹落ち感が必要だと思います。社会に対して自分たちの会社(組織)がどのような存在であるかを納得しているのであれば、自分は何のために仕事をしているのか、そのために自分は何をすべきかを自ら考え、行動に変えていきます。ブレずに、人に指示されるのではなく、自ら選択して行動します。パーパスはその基準となります。
社員を巻き込み何度も繰り返し腹落ちするまで話し合う
今迄100以上の組織が顧客から支持されていること何なのかを調査してみると、ただ顧客の要求通りに応じたことだけでなく、その技術力の高さ、会社としての姿勢、仕事の進め方 等、複数の観点からオファーをいただいていることした。
自社の製品・サービスが顧客にどのような価値を提供しているかということを様々な観点で社員全員を巻き込んで一緒に考えていく場を作って下さい。先ほどにも書いたようにまだ気づかない自社の強みや可能性を見出してくれます。
技術的な強み、顧客から支持されている理由、他社よりすぐれている事 等、製品やサービスをただ顧客へ提供するということだけでなく違う視点で強みを見てみませんか。
私が支援させていただいている建設業の中小企業では、新たに「建設サービス業」として事業を再定義しての取り組みが始まりました。ワンストップでのサービスを提供して、顧客に貢献していくことをビジョンに明示しています。 そうして話し合った内容は、経営者が見逃していた事に気づくことも出てきます。それは、自分達の会社が社会に対してどんな価値を提供し続けているのか、なぜ必要とされているかということです。なので、社員と一緒に考え、話し合って合意して欲しいのです。ただ、一度再定義したことがしっくりこない事もありますし、この取り組みは正直面倒なことが多いです。なかなか意見も出てこない事もあります。しかしながら、 ただ、このフェーズをはずしてしまうと、今迄通り経営者の意向だけで進んでしまい、社員の思考停止が続き、参画の場も作れず、組織として成長するチャンスを逸してしまいます。
社員が自ら選択して行動できるか、組織は
社員が自ら選択して行動する重要性をこのコラムで述べてきました。これは、神戸大学の調査でも明らかになっているのですが、周囲からの意見で決めた人より自らの選択で行動した人の方が幸福感が高い事がわかっています。
ここで誤解して欲しくないのは、組織内では様々な指示のもとでで活動する事が多々ありますが、その中で指示された当事者がその事についてどのように考え、自分事にしていく事ができるのかということです。本意でなく理不尽な事もあります。どうしても納得できない事もあります。そこで自身はこの事に対してどうするかを決めて取り組むしかありません。これも選択です。日常はこの連続といっても過言ではありません。そんな中で“幸福感”が持てるのか、という疑問です。
①自分は、何のためにこの仕事をしているのか、どうしてこの仕事をしているのか話すことができるか:価値観を明確に
②上司、同僚を含めて率直にいろいろな事が話す事ができる関係性が作られているか:
上記の2つについて、当事者の視点でそれぞれ「Yes」であれば、組織に対する信頼が厚く、安心して思っていることを発言し、行動に移して能力を発揮しようとします。組織が結果を出し続けて、成長していきたいのであれば、この2点に取り組んで下さい。まず、①がはっきりしているのであれば、何をするのかが明確になり、自ら決断できるようになり、ブレずに前に進む事ができます。②は、経営者自らが組織の変化の必要性への想いを発信し、管理職レベルまで、その想いを共有して、部下と向き合わないといけません。
従いまして、まずは管理職レベル人たちの行動変容への取り組みから始め、広げていく事です。次回以降で更に突っ込んでお話しをしたいと思います。